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【第4回】tkinter 増えてきた状態を、どう整理するか

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増えてきたものが、気になり始める

tkinterで小さなアプリを作っていると、
あるタイミングで、ふと気づくことがあります。

「あれ、変数が増えてきたな」
「関数も、いつの間にか多くなっている」
「動いてはいるけど、全体が少し見えにくい」

第3回までの内容を踏まえていれば、
これは失敗ではありません。
むしろ、順調に進んでいる証拠です。

状態を持ち、
イベントでそれを更新し、
画面に反映する。

この基本が分かってくると、
自然と「扱う情報」が増えていきます。
それに合わせて、
コードの中身も少しずつ賑やかになります。

動く。でも、落ち着かない

ここで多くの人が感じるのが、
言葉にしにくい違和感です。

  • どこで何が更新されているのか
  • この変数は、誰のものなのか
  • 関係している処理が、あちこちに散らばっている気がする

エラーが出るわけでもなく、
動作がおかしいわけでもありません。
それでも、
「このままでいいのかな」
という感覚が残ります。

この違和感は、
まだ知識が足りないからではありません。
むしろその逆で、
理解が進んだからこそ生まれる感覚です。

次に必要なのは、
新しい文法でも、
高度なテクニックでもありません。

増えてきた状態や処理を、
どう整理して考えるか
第4回では、その入口に立ってみましょう。

目次

第1章:状態が増えると、見通しが悪くなる

tkinterでアプリを作り始めたばかりの頃は、
状態はせいぜい1つか2つです。

カウント用の変数。
表示を切り替えるためのフラグ。
そのくらいなら、
どこで使われているかも一目で分かります。

ところが、
少しだけ機能を足してみると、
状況はすぐに変わります。

  • 表示用の状態が増える
  • 入力に関する状態が増える
  • 処理を分けた結果、関数も増える

どれも自然な流れです。
「アプリらしく」なってきた証拠でもあります。

問題は、増えたことではない

ここで勘違いしやすいのは、
「状態が増えたからダメになった」
と思ってしまうことです。

でも実際には、
問題は数ではありません。

  • どの状態が
  • どの処理と関係していて
  • どこで更新されているのか

そのつながりが、
少しずつ見えにくくなってくること。

グローバル変数が悪者に見え始める瞬間

多くの場合、
このタイミングで
グローバル変数が気になり始めます。

  • あちこちから参照されている
  • どこで書き換わるのか分かりにくい
  • 名前が増えて、把握が大変

とはいえ、
ここまでの書き方が間違っていたわけではありません。

最初はそれで十分だったし、
だからこそ、ここまで来られたのです。

見通しが悪くなるのは、成長のサイン

状態が増えて、
処理も増えて、
全体が少し見えにくくなる。

この感覚は、
「失敗」ではなく、
次の段階に進む合図です。

コードが壊れたわけでも、
理解が足りないわけでもありません。

ただ、
今までと同じ置き方では、
少し窮屈になってきただけ。

ここまで来たら、
次に考えたくなるのは自然とこうです。

「これ、同じ話をしているもの同士で
まとめられないだろうか?」

次の章では、
この人として自然な感覚が、
そのままコードの整理につながっていくところを見ていきます。

第2章:「同じ話」を、ひとまとめにしたくなる

状態が増え、
処理も増えてくると、
コードを眺めたときに、こんな感覚が生まれます。

「この変数と、この関数、
いつも一緒に使っているな」

「この処理は、
この画面のためだけのものだな」

これは、
コードが壊れているサインではありません。
むしろ、関係性が見えてきた証拠です。

人は、自然と「まとまり」を探す

プログラムを書いているとき、
私たちは無意識のうちに、
関係のあるもの同士を結びつけようとします。

  • この状態は、この画面のもの
  • この処理は、このボタンに関係している
  • この表示更新は、この流れの一部

頭の中では、
すでにグループ分けが始まっています。

問題なのは、
そのまとまりが、
まだコードの形になっていないことです。

バラバラでも動く。でも、疲れる

状態と処理が
あちこちに散らばったままでも、
tkinterはちゃんと動いてくれます。

ですが、

  • 変更するときに、探す場所が増える
  • 関係のない部分まで気にしてしまう
  • 「触っていい範囲」が分かりにくい

といった、
小さな疲れが積み重なっていきます。

これは技術的な問題というより、
読み手としての負荷です。
多くの場合、その読み手は自分自身です。

「まとめたい」は、とても健全な感覚

ここで大事なのは、
「まとめたい」と感じたこと自体が、
とても健全だということです。

それは、

  • 状態の役割が分かってきた
  • 処理の責任範囲が見え始めた
  • 全体像を意識できるようになった

という、
理解が一段深まったサインでもあります。

Pythonは、そのための道具を用意している

ここまで来ると、
自然と次の問いが浮かびます。

「この関係性を、
そのままコードにできないだろうか?」

Pythonには、
関連するデータと処理を
ひとまとめにするための仕組みが用意されています。

それは、
何か特別なものではなく、
整理するための箱のような存在です。

次の章では、
その箱を使うと何が変わるのかを、
最小限の形で見ていきましょう。

第3章:クラスは「整理するための箱」

ここまでで、
状態と処理を「ひとまとめにしたい」という感覚が、
かなり自然に育ってきたはずです。

この段階で登場するのが、
Pythonの クラス です。

とはいえ、
ここで身構える必要はありません。
クラスは、
新しい考え方を覚えるものではなく、
今まで考えてきたことを、そのまま入れる箱だからです。

クラスは、状態と処理を一緒に持てる

これまでのコードでは、

  • 状態は変数として、あちこちに置かれ
  • 処理は関数として、別の場所に書かれていました

それ自体は問題ありません。
ただ、関係性が見えてきた今となっては、
少し散らかって見えるだけです。

クラスを使うと、

  • 状態
  • その状態を操作する処理

を、同じ場所にまとめることができます。

最小の形で見てみる

まずは、
「これ以上削れない」くらいの形を見てみましょう。

class App:
    def __init__(self, root):
        self.count = 0
        self.label = tk.Label(root, text="0")
        self.label.pack()

    def on_click(self):
        self.count += 1
        self.label.config(text=str(self.count))

ここでやっていることは、
今までと何も変わっていません。

  • count は、これまでの状態
  • on_click は、これまでの処理

違うのは、
それらが 同じ箱の中に入った という点だけです。

self は「この箱の中身」

クラスが難しく見える原因のひとつが、
self という存在です。

でも、
ここではこう考えれば十分です。

  • self.count は、この箱が持っている状態
  • self.on_click は、この箱が持っている処理

self は、
「今扱っている、このひとまとまり」を指しているだけ。

特別な魔法でも、
分かりにくい仕組みでもありません。

何が変わったのか

クラスを使ったことで、
コードに起きた変化はとても静かなものです。

  • グローバル変数が減った
  • 状態の持ち主がはっきりした
  • 関係のない部分を、気にしなくてよくなった

結果として、
コード全体が少し静かになります

これは、
動作が変わったからではなく、
見通しがよくなったからです。

クラスは「正解」ではない

ここで強調しておきたいのは、
クラスを使うこと自体が、
正解でも義務でもないということです。

  • 小さいうちは、関数と変数で十分
  • 整理したくなったら、使えばいい
  • 必要になる前に、無理に使わなくていい

クラスは、
「使わなければいけない道具」ではなく、
使うと楽になる道具です。

ここまで来ると、
クラスはもう
「よく分からない難しいもの」ではなく、
自然な選択肢のひとつとして見えてくるはずです。

次は、
ここまでの第4回全体をまとめながら、
「整理できるようになった状態」を
一度、俯瞰してみましょう。

まとめ ― 整理したくなったら、次の段階

第4回では、
tkinterでアプリを作っていく中で、
状態や処理が増えてきたときに感じる違和感を出発点にしました。

変数が増え、
関数も増え、
全体が少し見えにくくなる。

これは、
何かを間違えた結果ではありません。
むしろ、
理解が進み、アプリらしくなってきた証拠です。

状態を持ち、
イベントでそれを更新し、
画面に反映する。

この流れが自然に書けるようになると、
次に気になってくるのは、
「どう整理すればいいか」という点です。

第4回では、
その整理の仕方として、
クラスを選択肢のひとつとして眺めました。

クラスは、目的ではなく手段

ここで見てきたクラスは、

  • 難しい設計のためのものでも
  • 正解を押し付けるものでもありません

状態と処理を、
ひとつの箱にまとめるための道具でした。

使えば、
コードの見通しがよくなり、
触る範囲がはっきりします。

でも、
使わなければ動かないわけでもありません。

大切なのは、選べること

tkinterでアプリを書くとき、
大切なのは
「どの書き方が正しいか」ではなく、
「いま、どの書き方が楽か」を選べることです。

  • 小さいうちは、シンプルな形で
  • 増えてきたら、少し整理して
  • さらに育ったら、また考える

その判断ができるようになった時点で、
もうtkinterは
「分からないGUIライブラリ」ではありません。

次に進むとしたら

ここまでで、

  • イベント駆動という世界観
  • 状態がアプリを形づくること
  • 整理するための考え方

が、ひとつの線としてつながりました。

次に見えてくるのは、

  • 表示とロジックをどう分けるか
  • 画面が増えたらどうするか
  • アプリとしてどう育てていくか

といった、
もう一段先の話です。

焦る必要はありません。
今見えている範囲を、
静かに整理できるようになったこと自体が、
大きな前進です。

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