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【第5回】状態が増えたとき、tkinterはなぜ急に難しくなるのか

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「最初は簡単だったのに」という、あの違和感から

tkinterを触り始めた頃は、
不思議なほど素直に動いてくれたはずです。

ボタンを置いて、
ラベルを更新して、
ちょっとした処理を書くだけで、
「ちゃんとアプリっぽいもの」ができあがる。

変数も少なく、
self.xxx が何を指しているのかも、頭の中で自然に追えていた。

ところが――
機能を少しずつ足していくうちに、
ある瞬間から、急にこう感じ始めます。

  • 何がどこで変わっているのかわからない
  • self が増えすぎて、触るのが怖い
  • 動くけれど、もう理解できていない

それでもエラーが出るわけではありません。
アプリは「一応」動いている。

だから余計に厄介です。

「自分の書き方が悪いのかな」
「tkinterって、やっぱり難しいのかな」

そう思い始めたなら、
あなたは間違った方向に進んでいるのではありません

むしろ逆です。

それは、
tkinterが難しくなったのではなく、
あなたが“次の段階”に足を踏み入れたサイン
です。

この回では、

  • なぜ状態が増えると、急に考えられなくなるのか
  • なぜ self が増えるほど、全体が見えなくなるのか
  • そしてそれは、tkinter特有の問題なのか

という点を、
コードの書き方ではなく、構造と考え方の視点から整理していきます。

少し長くなりますが、
そのぶん「なぜ混乱が起きていたのか」を
きちんと腑に落とすことを目指します。

もし今、
「動いてはいるけれど、もう説明できない」
そんな感覚を抱えているなら――

この記事は、きっと役に立つはずです。

目次

第1章|「変数が増えた」ように見えて、本当に増えているもの

変数が増えただけ、では済まなくなる瞬間

tkinterでアプリを作っていると、
機能追加のたびに変数が増えていきます。

self.count
self.name
self.is_editing
self.selected_item

最初のうちは、これでも問題ありません。
どれも「今どうなっているか」を表す、
わかりやすい値だからです。

ところが、ある程度規模が大きくなると、
同じように変数を追加しているはずなのに、
急に全体が見えなくなってくる

このとき多くの人は、こう考えます。

「変数が増えすぎたせいだ」

でも、
本当に増えているのは、単なる変数でしょうか。

GUIにおける変数は「状態」を表している

tkinterに限らず、
GUIアプリで扱う変数の多くは、
数値や文字列そのものではありません。

それらはすべて、

「アプリが今、どんな状況にあるか」

を表しています。

たとえば、

  • 編集中かどうか
  • 何かが選択されているか
  • 入力が完了しているか
  • 保存済みか、未保存か

これらはすべて、
**画面の裏側で保持されている“状態”**です。

つまり、

変数が増えているように見えて、
実際には「覚えておくべき状況」が増えている

ということになります。

「状態」が増えると、頭が追いつかなくなる理由

問題は、
状態そのものが悪いわけではありません。

問題になるのは、
状態が増えたとき、それらの関係が見えなくなることです。

  • この状態は、どこで変わるのか
  • どの処理が、この状態に依存しているのか
  • 今この画面は、どの状態にあるのか

これらを同時に頭の中で追い続けるのは、かなりの負荷になります。

特に tkinter は、

  • 処理が上から順に流れない
  • ボタンやイベントで、突然処理が呼ばれる

という性質を持っています。

そのため、
状態が増えるほど、

「今、どこから来て、どこへ行こうとしているのか」

が見えなくなってしまうのです。

混乱の正体は「変数の数」ではない

ここで、いったん整理しましょう。

混乱の原因は、

  • 変数が多いこと
  • self が多いこと

そのものではありません。

本当の原因は、

状態が、文脈ごとに整理されていないこと

です。

すべての状態が
同じ場所・同じ視点で扱われていると、
アプリ全体の「今」が曖昧になります。

これは tkinter 特有の問題ではなく、
イベント駆動型アプリすべてに共通する壁です。

この時点で起きていること

ここまで来ているあなたは、

  • tkinterが難しくなった
    のではなく、
  • 「状態を設計する段階」に入った

だけです。

次の章では、
なぜ self が増えるほど考えづらくなるのか
その理由をもう一段、深く掘り下げていきます。

第2章|なぜ self が増えると、急に考えられなくなるのか

self が悪者に見え始めたとき、実は何が起きているか

アプリが大きくなってくると、
多くの人が一度はこう思います。

「self が多すぎて、もう追えない」

そして次に、
self そのものが悪いような気がしてくる。

でも、先に結論を言ってしまうと――
self は何も悪くありません。

問題は、
**self に“何を背負わせているか”**です。

self は「自分の状態を覚えているだけ」

まず前提を整理します。

self がやっていることは、実はとても単純です。

  • クラスの中で
  • 「今の自分がどういう状態か」を
  • 覚えておく

それだけです。

self.count
self.is_editing
self.selected_item

これらはすべて、

「このオブジェクトはいま、こういう状態です」

というメモに過ぎません。

つまり、
self が増えるということは、

「一人の登場人物が、たくさんのことを覚え始めた」

という状態でもあります。

人は、同時にたくさんの文脈を扱えない

人は、

  • 今どの画面か
  • 何をしようとしているか
  • どのボタンが押されたか

といった文脈をもとに考えます。

ところが self が増えすぎると、

  • この処理は、どの状態を前提にしている?
  • その状態は、いつ変わった?
  • 今の self は、どの組み合わせ?

といった問いを、
同時に頭の中で解かなければならなくなる

これが一気にしんどくなります。

コードが読めないのではなく、
状況が想像できなくなる

これが、

「急に考えられなくなった」

と感じる正体です。

self が増えた瞬間に起きる“視点の崩れ”

最初の頃は、
self の中身を 一覧で思い浮かべられた はずです。

  • 今はこれ
  • 次はこれ

というように、
視点が一つにまとまっていた。

ところが状態が増えると、

  • ある処理は A の状態を前提にしていて
  • 別の処理は B の状態を前提にしている

というように、
処理ごとに視点が分裂し始めます。

その結果、

「今、このクラスは何を代表しているのか」

が、わからなくなる。

self が増えて苦しくなるのは、
コード量の問題ではなく、視点が散らばったサインです。

「全部 self にある」こと自体が、警告灯

ここで一つ、
大事な見分け方があります。

もし、

  • 画面に関する状態
  • 入力データの状態
  • 処理の途中経過
  • 一時的なフラグ

これらが すべて同じ self に詰め込まれているなら、
それはこう言い換えられます。

一人に、複数の役割を同時にやらせている

人でも、
それはしんどくなります。

tkinterでも同じです。

「整理できていない」のではなく、「分ける段階に来ただけ」

ここまで来ている人は、
決して失敗していません。

むしろ、

  • 小さなスクリプト
  • 単発の処理

を卒業して、

「構造を意識するアプリ」

に入っただけです。

self が増えて苦しくなるのは、
成長の証拠でもあります。

次の章では、
この混乱がなぜ tkinter で特に顕在化しやすいのか、
イベント駆動という観点から整理していきます。

第3章|tkinterは「イベント駆動」である、という前提

処理が上から流れない世界で、何が起きているのか

これまでの章で、

  • 変数が増えたわけではなかった
  • self が悪いわけでもなかった

というところまで整理してきました。

では、
なぜこの混乱が tkinter で特に起きやすいのか

その答えは、
tkinterが採用している イベント駆動 という仕組みにあります。

tkinterは「待つ」プログラムである

通常のスクリプトは、

  1. 上から順に処理が流れ
  2. 最後まで実行されたら終わる

という世界にいます。

一方、tkinterは違います。

  • 起動したら
  • そこで「待ち」に入る
  • 何か起きたら、その都度呼ばれる

つまり tkinter は、

「次に何が起きるかわからない世界」

で動いています。

処理の順番を、人間が完全に支配していない

ボタンが押されたとき、
どの関数が呼ばれるかは書いています。

でも、

  • どのボタンが
  • いつ
  • どの状態で

押されるかは、
人間ではなくユーザーが決めます

そのため、プログラム側は常にこう問われます。

「今の状態で、このイベントが来たらどうする?」

これに答えるために、
状態を持たざるを得ない。

でも同時に、
状態が増えすぎると、
その問いに答えられなくなっていきます。

「状態を持たないと壊れる」「持ちすぎると壊れる」

ここで、tkinter特有のジレンマが現れます。

  • 状態を持たない
    → 何が起きているか分からず壊れる
  • 状態を持ちすぎる
    → 全体像が見えず壊れる

どちらも、
同じ“壊れる”でも原因が違う

そして多くの人は、
この中間点を探してさまよいます。

イベントは「今ここ」しか教えてくれない

イベントハンドラが知っているのは、

  • 今、何が起きたか

だけです。

  • どういう経緯でここに来たか
  • これから何が起きる予定か

は、イベント自身は知りません。

だからこそ、

過去と文脈を、状態として保持する必要がある

しかし、
その状態が整理されていないと、

  • イベントごとに前提が違う
  • 同じ関数でも意味が変わる

という状況が生まれます。

これが、

「同じ処理なのに、時々挙動が違う」

という、
最もデバッグしづらい問題を生みます。

tkinterが難しいのではなく、非線形な世界に入っただけ

ここまでをまとめると、

  • tkinterは線形ではない
  • イベント駆動は文脈を分断する
  • 状態が、その断片をつなぐ

という構造が見えてきます。

つまり、

tkinterが急に難しくなったのではない
あなたが、非線形な設計の世界に入っただけ

ということです。

これは Web アプリでも、
ゲームでも、
同じ壁が現れます。

次の問題は「状態をどこに置くか」になる

イベント駆動という前提を受け入れると、
次に自然と浮かぶ疑問があります。

  • 状態は、どこに置くべきか
  • 何と何を、分けて考えるべきか

次の章では、
「状態」と「振る舞い」を混ぜると何が起きるか
をテーマに、
混乱が加速するポイントを整理していきます。

第4章|「状態」と「振る舞い」を混ぜると、何が起きるか

コードは動いているのに、説明できなくなる瞬間

ここまでで、

  • 状態が増えると認知負荷が跳ね上がる
  • tkinterはイベント駆動で、文脈が分断されやすい

という前提が見えてきました。

では、
なぜ混乱が一気に加速する瞬間があるのか

その正体が、
「状態」と「振る舞い」を無意識に混ぜ始めたときです。

「状態」と「振る舞い」は別のもの

まず、言葉を整理します。

  • 状態
    → 今どうなっているか
  • 振る舞い
    → 何が起きるか、何をするか

たとえば、

  • 編集中かどうか → 状態
  • 保存処理を実行する → 振る舞い

これ自体は、
とても当たり前の話です。

でも実際のコードでは、
この二つが簡単に混ざります。

よくある混在パターン

たとえば、こんな流れです。

  • ボタンが押された
  • 状態を確認する
  • 状態を変更する
  • 処理を実行する

これを一つの関数で書くと、

「この関数は、
状態を見て、変えて、処理もする」

という何役も背負った存在になります。

最初は問題ありません。
でも機能が増えると、

  • この関数は、どの状態を前提にしている?
  • ここで状態を変えていい?
  • 別のイベントから呼ばれたら?

という疑問が出始めます。

「今、どの状態なのか」が見えなくなる

状態と振る舞いが混ざると、
次のようなことが起きます。

  • 状態が、処理の途中で変わる
  • どこで変わったか分からない
  • 関数の入り口と出口で意味が違う

結果として、

「今このアプリは、どんな状態なのか」

を、
コードから読み取れなくなります。

これが、
「動くけど理解できない」状態です。

イベント駆動では、この問題が表面化しやすい

イベント駆動では、

  • 同じ処理が
  • 違うイベントから
  • 違う状態で

呼ばれます。

そこに、

  • 状態の変更
  • 処理の実行

が混ざっていると、
文脈が完全に絡まる

この絡まりは、
if を増やしても、
コメントを増やしても、
解けません。

「混ぜてはいけない」というより、「意識しないと混ざる」

ここで大事なのは、
「混ぜるな危険」と言いたいわけではありません。

問題は、

混ざっていることに気づいていない

ことです。

意識せずに混ざると、

  • どこで判断して
  • どこで実行して
  • どこで状態が変わるのか

が見えなくなります。

これが、
self が増えたときに一気に苦しくなる
決定的な原因です。

次に必要なのは「役割で分ける」という視点

ここまで来ると、
次に出てくる問いは自然です。

  • 状態は、どこで持つべきか
  • 振る舞いは、どこに置くべきか

次の章では、
クラスは「整理箱」ではない
という話を通して、
この混乱をどうほどいていくかを見ていきます。

第5章|クラスは「整理箱」ではない

変数をまとめても、混乱は減らない理由

ここまでで、

  • 状態が増えると見えなくなる
  • self が増えると考えられなくなる
  • 状態と振る舞いを混ぜると絡まる

という流れを追ってきました。

そこで多くの人が、
次にこう考えます。

「じゃあ、クラスで整理すればいいのでは?」

この発想自体は、間違っていません。
ただし――
整理の仕方を間違えると、混乱は残ります。

「クラス=変数をまとめる箱」という誤解

よくある整理の仕方は、こうです。

  • 関連しそうな変数を
  • 一つのクラスにまとめる

一見、整ったように見えます。

でもこのやり方では、

  • 何をするクラスなのか
  • どこまで責任を持つのか

が曖昧なままです。

結果として、

箱の中が整理されただけで、
全体の構造は変わっていない

という状態になります。

クラスは「役割」と「責務」を表す境界線

ここで視点を変えます。

クラスは、
変数をまとめるための入れ物ではなく、

「この存在は、何を担当するのか」

を表すものです。

たとえば、

  • 画面を描画する役割
  • 状態を管理する役割
  • 処理を実行する役割

これらは、
同じクラスでやる必要はありません。

むしろ、
分けた方が頭に入りやすくなります。

self が増えすぎるのは「役割が多すぎる」サイン

ここで、self の話に戻ります。

もし一つのクラスの self に、

  • 画面の状態
  • データの状態
  • 処理の途中経過

がすべて詰め込まれていたら、
それはこう言い換えられます。

一人で、全部やろうとしている

人でも、
それは限界が来ます。

tkinterでも同じです。

self が増えすぎたときは、
「整理が足りない」のではなく、

「役割を分けるタイミングが来た」

という合図です。

クラスを分けると「考える視点」が戻ってくる

役割ごとにクラスを分けると、
何が起きるか。

  • このクラスは、何を知っているか
  • 何を知らなくていいか

が、はっきりします。

すると、

  • 状態の置き場所
  • 振る舞いの担当

が自然に決まってくる。

self を追いかけなくても、
役割を追えば読めるコードに戻ってきます。

完璧な設計を目指さなくていい

ここで一つ、
大事なことを言っておきます。

最初から、

  • きれいに分ける
  • 正解の構造にする

必要はありません。

むしろ、

  • self が増えて苦しくなった
  • クラスの責務が曖昧だと感じた

その時点で、
すでに設計者の視点に立っています。

次に見るべきは「壊れ始める瞬間」

役割の視点を持つと、
次に気づくポイントがあります。

  • if が増え始めた
  • 触るのが怖くなった
  • 「これ、どこまで影響ある?」と考えた

次の章では、
こうした壊れ始める瞬間
言語化していきます。

第6章|「壊れ始める瞬間」を言語化する

動いているのに、触るのが怖くなったら

ここまでで、

  • 状態が増え
  • self が増え
  • 状態と振る舞いが混ざり
  • クラスの役割が曖昧になる

という流れを見てきました。

では実際に、
どのタイミングで「壊れ始めた」と気づけるのか

多くの場合、それはエラーではありません。

「壊れた」のではなく、「予測できなくなった」

本当に厄介なのは、
アプリが止まることではありません。

  • エラーは出ない
  • ちゃんと動く
  • でも、なぜ動いているか説明できない

この状態になったとき、
すでに構造は悲鳴を上げています。

壊れたのではなく、

自分の頭の中にある“予測モデル”が壊れた

という状態です。

よくある「警告サイン」

ここで、
多くの人が経験しているはずのサインを挙げます。

  • if / elif が増え始めた
  • 引数が増えてきた
  • 「とりあえずここでフラグを立てた」
  • コメントで説明しないと分からない
  • 「ここは触らないでください」という気持ち

これらはすべて、

構造が追いついていないサイン

です。

技術不足ではありません。

if が増えるのは「判断が分散した証拠」

特に if の増殖は、
とても分かりやすい兆候です。

if が増えるということは、

  • 状態の組み合わせが増えている
  • その判断を、一箇所で背負っている

ということ。

これは、

本来分かれているべき役割が、
まだ一緒になっている

という状態でもあります。

「触るのが怖い」は、設計者の感覚

この感覚、
実はとても大事です。

  • ここを変えると、どこに影響する?
  • 想定外の動きをしない?

こう思い始めたということは、

全体像を、無意識に把握している

ということでもあります。

逆に言えば、
初心者の頃は「怖さ」すら感じません。

怖さを感じるのは、
見えているからです。

コメントが増えたら、構造を疑う

コメントが悪いわけではありません。

でも、

  • 処理の意味を
  • 行ごとに説明しないと読めない

状態になっていたら、
それはコードではなく、

構造で語るべき段階に来ている

という合図です。

ここで立ち止まれる人は、もう一段上

この章で伝えたいのは、
「こうなったらダメ」という話ではありません。

  • 気づけた
  • 違和感を言葉にできた

その時点で、

あなたは、壊れる前に立ち止まれている

次の章では、
ここまでの混乱を踏まえて、

  • どう整理し直すか
  • 何から手を付ければいいか

を、今すぐ使える視点としてまとめます。

第7章|どう整理するか(今すぐできる第一歩)

完璧に直さなくていい。まず「見える」状態に戻す

ここまで読み進めてきたあなたは、
すでにこう感じているかもしれません。

  • 理屈は分かった
  • でも、全部作り直すのは大変そう
  • 正解の設計なんて分からない

安心してください。
今すぐ完璧な構造にする必要はありません。

ここでのゴールは、

もう一度「考えられる状態」に戻ること

です。

第一歩は「状態を書き出す」こと

まずやってほしいのは、
コードを書くことではありません。

紙でも、メモでもいいので、
今のアプリが持っている状態を列挙します。

  • 編集中 / 非編集
  • 選択中の項目
  • 入力済み / 未入力
  • 保存済み / 未保存

ここでのポイントは、

  • 変数名ではなく
  • 意味で書く

ことです。

「どんな状態を覚えているアプリなのか」
を、言葉で把握します。

状態を「固まり」で眺めてみる

次に、それらの状態を眺めてみてください。

すると、

  • 画面に関するもの
  • データに関するもの
  • 処理の途中経過

といった自然なまとまりが見えてきます。

この時点では、

  • クラスを作る
  • 設計を決める

必要はありません。

「あ、これは同じ文脈だな」

と感じられれば十分です。

「全部 self にある」状態から、一歩引いて見る

次に、
今のコードを少しだけ引いた目で見ます。

  • この self は、何を代表している?
  • どこまで知っている必要がある?

もし答えに詰まるなら、
それは設計が悪いのではなく、

役割が一つに固まりすぎている

というだけです。

いきなり分けなくていい。境界を意識するだけでいい

多くの人が、
ここで「分けなきゃ」と焦ります。

でも大丈夫です。

まずは、

  • ここからここまでは画面の話
  • ここから先は処理の話

と、心の中で線を引くだけでいい。

その線は、
あとからコードに反映すればいい。

self を「全部覚える存在」から降ろす

self を減らすことが目的ではありません。

目的は、

self が「何者か」を説明できる状態に戻す

ことです。

  • このクラスは画面担当
  • このクラスは状態担当

そう説明できるようになれば、
自然と self の中身は落ち着いてきます。

「整理できない」は、「気づきが追いついていない」だけ

最後に、
一番大事なことを。

ここまで来ている人は、

  • センスがない
  • 向いていない

のではありません。

むしろ、

気づきの速度に、コードが追いついていない

だけです。

一度立ち止まり、
構造を見直す視点を持てたなら、
それはもう「次の段階」に進んでいます。

この先へ

ここまでで、

  • なぜ難しくなったのか
  • どこで混乱が始まったのか
  • どう立て直せばいいのか

が見えてきました。

次に進むなら、

  • 役割をどう分けるか
  • 状態をどこに置くか
  • 画面遷移をどう考えるか

といった、構造を育てる話になります。

それは、
tkinterだけでなく、
Webアプリや他のGUIにもつながる視点です。

最終章|tkinterが難しいのではない。あなたが「設計の入り口」に立っただけ

混乱は、成長のサインだった

ここまで読み進めてきて、
もしあなたが少しでも

  • 「あれは自分のせいじゃなかったのか」
  • 「あの混乱には理由があったんだな」

と感じているなら、
この回はもう役割を果たしています。

tkinterが急に難しくなったわけではありません。
あなたの理解力が落ちたわけでもありません。

ただ――
扱うものが「処理」から「構造」に変わった
それだけです。

「動くコード」から「考えられる構造」へ

最初の頃は、

  • 上から順に読めて
  • そのまま理解できる

コードを書いていたはずです。

ところが、

  • 状態が増え
  • イベントが増え
  • self が増え

ある日、
コードは動いているのに、頭が止まる

それは失敗ではありません。

あなたの関心が、
「どう動かすか」から
「どう成り立っているか」へ
移った証拠
です。

ここから先は、tkinterだけの話ではない

この回で扱った話は、

  • 状態
  • 振る舞い
  • 役割
  • イベント駆動

すべて、tkinter固有のものではありません。

Webアプリでも、
ゲームでも、
業務システムでも、
同じ壁が、必ず現れます

そしてその壁は、

  • 才能で越えるものではなく
  • 経験で越えるものでもなく

「構造を言葉で捉えられるか」

で、越えていくものです。

今、あなたはどこにいるのか

もし今あなたが、

  • self が多くて苦しい
  • 構造を直したいけど、正解が分からない
  • 触るのが少し怖い

そう感じているなら――

あなたはもう、
初心者ではありません

そして同時に、
まだ迷っていていい段階でもあります。

迷えるということは、
全体を見ようとしているということだからです。

このシリーズの次へ

この第5回は、

  • なぜ混乱が起きたのか
  • どこで景色が変わったのか

を言語化する回でした。

次に進むなら、

  • 役割をどう分けるか
  • 状態をどこに置くか
  • 画面遷移やモードをどう考えるか

といった、
「構造を育てる」話になります。

それはもう、
tkinterを使うための話ではありません。

アプリケーションを“考えて作る人”になる話です。

最後に

コードが書けなくなったように感じた日、
それは後退ではありません。

思考の段階が、一段上がった日です。

もしまた混乱したら、
この回に戻ってきてください。

そして、
「これは成長の途中だ」と
静かに思い出してください。

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